朝、暗いうちに起きて、キャラメルを一片口に放り込み(これで、脂肪燃焼が促進されるらしい。)
アンダーアーマーを上下まとい、一週間前に買った運動靴を履いて、
トレーニングルームに行った。
木曜日だから、ストレッチ中心の軽めのメニューだ。
体幹の筋肉とバランスを鍛える運動、小学生の時に運動会でやった、組体操の扇の地面側の人の格好。
それが終わって、次の動きに移るとき、
コンコンとノックする人がいた。
まだ、太陽が昇る前に、起きて運動するのなんて、このアパートで僕くらいだから、人に声をかけられるのは珍しい。
朝早くから、長髪で汗びっしょりになっているアジア人(アジア人じゃなくても)声をかける理由なんて大体において見つからないのだから。
やせた背の高い老人で(僕より頭一つは高い。)頭頂部ははげあがって、残りの髪は真っ白で短く刈り込まれている。毛玉だらけのネイビーのセータに、クリースが8割方消えたチャコールグレーのズボンをはいている。顔のしわは深い。
そういったことより、彼を特徴づけているのは、エドサリバンショーの司会とかせむし男に見られるような、肩をすぼめたような猫背だ。
斜め向かいの部屋に、同じ頃合いの奥さんと住んでいる。
こんな時間に、普段付き合いの無い人から声をかけられるなんて、ロクな事であったためしがない。
大体、におい(異臭がするとか、焦げ臭いとか)、うるさいとか其の類いのクレームだ(部屋の位置関係から行って、水漏れの可能性はないだろう。)
警戒して、ドアを開けると、
突然、3ドルを押し付けられた、老人の顔と同じくらいしわくちゃな1ドル紙幣3枚。
おもわず受け取ると、間髪入れず
「thank you」
と。
どうやら、何か手伝ってほしいらしい。
部屋に連れていかれて、寝室まで通された。
そこには台車から、半分落ちているサムソン製のテレビが。大きさは40-45インチくらいだろうか。
これを僕の胸の高さのチェストにあげたいと(重いものを膝より高い位置に持ち上げるのって大変だよ。特にかさばる物は。)
でかいだけあって、手をかける場所も難しい。
なんとか、つかみどころを見つけて、持ち上げて、老人に手伝ってもらって、希望の場所へ。
願いがかなって、老人、笑みが顔全体に。
これで、週末存分楽しめるだろう。
何回も感謝の言葉をくれた。
よっぽど嬉しかったし、困っていたんだな。
トレーニングのDVDプログラムはまだ続いていたので、そのまま復帰して、
部屋に戻った。
シャワーを浴びながら
どうやって、寝室まで台車でテレビを持っていったのだ?
という、疑問が頭をかすめた。
車から降ろすことなんてできないだろうし。
まあ、いいか。
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